平成25年11月16日(土)に開催した文化祭イベント『ダンスフェス2013』は、おかげさまで大好評でした。ありがとうございました。
「ダンス・エクササイズ」。わかりやすくいうと、ダンスを取り入れた運動。これを介護が必要な高齢者にも応用できないものだろうか、とインストラクターの榎本加代子先生と話し合い、今年2月から週1回、まずはデイケア利用者を対象に始めた試み。名づけて「ダンス・リハビリ」、略して「ダンスリハ」。好評を受けて5月からは、榎本先生のお弟子さんの石橋貴子先生にお願いし、今度は入所者を対象に、週1回、おこなうようになりました。
今回のイベントのねらいは、これらのレッスンの様子を一般公開して、常連以外の人たちにも体験していただくことでした。そのことをHP上で紹介したところ、NHKのニュース番組と中日新聞近郊版で取り上げていただきました。ですが、これによって当施設をアピールしたいという売名的な気持ちはなく、「こんなにおもしろいものをここだけにしておくのはもったいない」というピュアな動機からでした。
この日、来ていただいたNHK名古屋放送局の女性記者、松岡さんは、翌週月曜におこなわれる榎本先生のいつものセッションに、カメラ担当と音声担当の人たちと取材に来ていただきました。その模様は11月21日のニュース番組『ほっとイブニング』で紹介されました。その裏話などを筆者のブログ『毒と薬』に書いてみましたので、興味のある方は是非ご一読ください。
オープニングは、ゲストとして、榎本先生が教えているスポーツ・クラブの生徒さん有志によるダンス・パフォーマンス。
ご自身の美容と健康のためにフィットネスに通っている方々なので、お客さんの前でダンスを披露することはないとのことでしたが、この日のために練習を積んできた荒井由美の初期のヒット曲「ルージュの伝言」を披露していただきました。豊寿苑のスタッフよりはご利用者にお年が近いはずなのに(失礼! ^_^;)、よくもまあ、あんなに激しく、しかも大胆に身体が動くものだなあと感心しました。日頃から運動することが、いかに大切なのか、身をもって示していただきました。このぶんだと、当施設のお客様になられることは当分なさそうです。
もうひと組のゲストは、榎本先生が春日井で教えておられるキッズ・ダンス・チーム、「ファンファン」の女の子たち。
この日は小学校低学年から高学年まで15人が、Kポップ・アイドル KARAの「HONEY」と、フィンガー5の「恋のダイヤル6700」の2曲でキュートなダンスを披露してくれました。さすがに若いだけあって、身体のキレが違います。それに花があります。その、あまりの愛らしさにおじいちゃん、おばあちゃんたち、みなさん目を細めておられました。
ゲストのみなさんのダンスを間にはさんで、前半は石橋先生のエクササイズ。先生には隔週ごとに当苑の3階と4階に出向いていただき指導してもらっています。この日も普段とほぼ同じメニューをダイジェストでやっていただきました。
フリのひとつひとつは体幹トレーニングにつながっています。お年寄りにも覚えやすいように、包丁を使ったり、調味料をかけたり、鍋をかき回したりと、料理作りになぞらえたフリになっていました。それらを4つぐらい組み合わせ、曲に合わせてくり返すというもの。この日、使った曲は(スタッフいわく)嵐とのことでした。
「ノリが悪かったらどうしよう」と内心ヒヤヒヤしていましたが、お年寄りも、スタッフも、のびのびと前向きに参加してくれて、とてもよかったと思います。
そして、いよいよメイン・イベントの榎本エクササイズ。榎本先生は通いのデイケア担当。この日は土曜日だったことから、先生が教えている月曜日のご利用者は数えるほどしかおられませんでした。
デイケアは居宅介護サービスの中の一つなので、一人一人のご利用者に応じて担当のケアマネージャー(当法人のスタッフとは限りません)が月次単位でスケジュール(ケアプラン)を組み立てます。そのため、驚くほど融通が利きません。
対照的に、榎本先生はフレクシビリティ(融通無碍)を絵に描いたようなパーソナリティ。その日の参加者の顔ぶれやムードを読み取り、臨機応変にメニューをこなしていきます。音楽でたとえるなら、簡単なテーマとコード進行だけを決めておいて、あとはアドリブで展開されるモダン・ジャズのノリ。つまり黒っぽい。
それから、見事な話術。おもしろくて、楽しくて、それでいてツボはちゃんと押さえていて、みんな、ついつい引き込まれ、その気になってしまいます。
この日の締めは、お得意のラテン系ダンス・エクササイズ。気づいたときには、彼女のもと、老若男女入り混じり、会場全体がホットなグルーヴに包まれていました。
ここで、ちょっとコアな話。
「Pファンク」と呼ばれるカリスマ、ジョージ・クリントンが率いる黒人ファンク集団があります。かれらがファンカデリックとして78年に発表した傑作アルバムのタイトルは『ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ』。
「グルーヴ」。ヘタな日本語でいうと「高揚感」。社会学者、見田宗介がいうところの「交響するコミューン」に近いのかも。つまり、響き合う一体感。これこそ、私がもっとも求めているものです。それがこの日、その通りになったと感じました。
楽しかったです。榎本先生、石橋先生、出演していただいたみなさん、ご利用者のみなさん、スタッフ、ならびにご参加いただいたすべてのみなさん、ありがとうございました。