スタッフや飛び入り参加者との取組のあとは、お年寄りとのスキンシップです。
大きなお相撲さんと握手をしたり、身体を触らせてもらったりと、みなさん、文字どおり「顔をくしゃくしゃにして」喜んでおられました。「気は優しくて力持ち」とはまさにこのことだと思いました。
お年寄りの他にも、赤ちゃんを連れてきて抱っこしてもらっている人たち、近所の子どもたち、障がい児デイサービスの子どもたちなど、お相撲さんたちのまわりには老若男女入り乱れてのひとだかりができていました。
そして、みんなで記念撮影。ところが、撮影希望人数が多すぎて、私は脚立を組んで上から何回にも分けて撮影する始末。とにかく、ものすごい熱気でした。
それから、休む間もなく、会場へ下りてこられなかった2階の寝たきりのお年寄り一人ひとりのもとへ。重度のため、表情に表すのが不得手な方たちなのですが、この日ばかりは表情が緩んで喜んでおられるのが伝わってきました。
また、当苑最長老の一人、百歳になるT・Sさんは、間近に見るおすもうさんの大きさに感激。朝弁慶さんの丸くて大きなお腹を、ご利益(りやく)を願ってか、後生大事(ごしょうだいじ)そうにさすっておられたのが印象的でした。
この間、マネージャーの松田さんは、厨房に入って、高砂部屋直伝のちゃんこ100食分を作り、みなさんにふるまっていただきました。
残苑ながら、私は両力士に付いていたため、食事会には参加できずイベント終了後にいただきました(ごめんなさい。そのためちゃんこの写真が撮れませんでした)。
豚肉、大根、にんじん、ゴボウ、キャベツ、タマネギ、シイタケなどを具材に用いた合わせ味噌仕立ての、やや甘口でしっかりした味付けでとてもおいしかったです。
こうして午後2時に始まって3時30分まで、本場所直後でお疲れだったにもかかわらず、終始にこやか、サービス満点にお年寄りと接していただけました。
興奮は冷めやらず、デイケアで参加の方々は帰りの送迎車の中で、入所の方々は夕食のテーブルでこの日の話題で大にぎわいだったそうです。
【総括】
相撲はもともと、競技というよりも、外からやって来た神(まれびと)が、田を舞台にその土地の精霊を打ち負かして豊穣をもたらすという神事的な芸能だったといわれています。現在も地方巡業があるのは「まれびと」の末裔である力士たちがその土地や人びとに幸をもたらしてくれると日本人は漠然と感じているからだと思います。
今回、お年寄りたちの、あの感激ぶり、あの熱狂ぶりを目の当たりにして、おすもうさんは人じゃない、むしろカミに近いとさえ思いました。
最後に、お年寄りのみなさん、子どもたちをはじめとする近隣の人たち、そして私たちスタッフの心に忘れえぬ大切な思い出を残していただいた高砂部屋の朝弁慶さん、朝乃丈さん、マネージャーの松田さん、朝日新聞厚生文化事業団の名古屋事務所の田中さん、ならびに大阪事務所の岩切さん。本当にありがとうございました。皆さまのよりいっそうのご飛躍とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
(終わり)
2015.09.25 | 地域交流