毒と薬

戦前のSPレコードがおしゃれに甦る〜ぐらもくらぶの活動(その3)

毛利眞人著『砂漠に日が落ちて 二村定一伝』(講談社)

毛利眞人著『砂漠に日が落ちて 二村定一伝』(講談社)

これらスーパーレア音源を復刻したのは、戦前レコード文化研究家でSPレコードのコレクターの保利透さんが主宰するぐらもくらぶというレーベルです。保利さんは72年生まれ。保利さんの協力者で『ニッポン・スウィングタイム』『砂漠に日が落ちて 二村定一伝』(共に講談社)などの著者である毛利眞人さんも同じく72年生まれ。『想ひ出の浅草』で浅草オペラの箇所を主に担当した小針侑起さんにいたっては80年代の生まれというから驚きです。

このようにぐらもくらぶを中心とした、ここ数年の戦前SP音源復刻ブームを支えているのは若い世代の人たちです。当苑のご利用者をみればわかるように、いまや、かなりの高齢といわれている人たちでさえ、せいぜい大正末〜昭和初めの生まれで、その人たちが戦前の録音を「懐メロ」として親しむことはほぼなくなったといっていいでしょう。
61年生まれのわたしも含め、保利さんや毛利さんのような若い世代の人たちにとって、あまりにも自分からかけ離れた時代の音であるがために、それらは「古びた音」ではなく「新しい音」として響いてくるのだと思います。

といっても、これらを楽しめるのは、戦前日本の文化や社会史的な背景にくわしいひと握りのマニアに限られるのですが‥‥。

2014.06.17 | 音楽とアート