毒と薬

TSUTAYAと提携する小牧市新図書館はスタバ?

新図書館の外観イメージ(小牧市HPより)

新図書館の外観イメージ(HPより)

小牧市が進める新図書館建設計画の賛否を問う住民投票が、10月4日、市会議員選挙投票日と合わせておこなわれることになりました。

新図書館の建設予定地は、豊寿苑から徒歩5分、小牧駅東口に市が所有する一等地です。ここに延べ床面積は現在の2.6倍、最大収容冊数は2倍強の約50万冊という図書館を約42億円かけて平成30年(2018)のオープンをめざすというものです。

この図書館は、大手レンタル店TSUTAYAを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)などの民間業者と連携して、基本設計から開館後の運営管理まで携わってもらうということです。

この計画は市民の意見をじゅうぶんに聞いた上での決定ではないので白紙に戻すべきである、と市民グループ「小牧の図書館を考える会」が署名を集めて、今回の住民投票にこぎつけました。

この話を聞いて思ったのは、民間の指定管理者がTSUTAYAでなく、小説家・詩人の辻井喬(つじいたかし)でもあったセゾングループ元代表の堤清二が創業した書店リブロだったら、ここまでの反発を招いただろうか、ということです。

CCCは、俗っぽいレンタル業者TSUTAYAのパブリック・イメージを払拭しようとしてか、東京・代官山に建築やレイアウトに気を配った蔦屋書店というハイセンスな書店もやってます。そこは、場所柄もあるでしょうが、本の中味そのものよりも本をめぐるライフスタイルにこだわっている感じです。

代官山 蔦谷書店(HPより)

代官山 蔦屋書店(HPより)

年中無休で夜まで営業、カフェを併設するという新図書館も、基本的にはそんなライフスタイル提案型のコンセプトに則っているのかもしれません。

そう思うと、小牧市に先行してCCCが指定管理する佐賀県の武雄市図書館の蔵書に、10年以上前の公認会計士試験対策本やら、埼玉県のラーメンマップやらが混ざっていても驚くに当たりません。なぜって、大切なのは全体としての見た目と雰囲気であって、個々の具体的な中味なんて二の次なんですから。

武雄市図書館(HPより)

武雄市図書館(HPより)代官山蔦屋書店と比較してみよう。まさしく金太郎飴!

ことわっておきますが、私は「図書館のデザイン化はけしからん」といいたいのではありません。なんといっても、私は「思想はファッションでもある」という80年代ポスト・モダン世代ですから、図書館をスタイリッシュにデザインすることには基本的に賛成です。

ただ、CCCのセンスが気に入らんのです。

なんというか、一見、洗練されてはいるんだが没個性的。ビッグ・データから導き出されたマーケティングにもとづく広告代理店的なステレオタイプ(金太郎飴)の機能美みたいで、ハイセンスどころか、小っ恥ずかしくなります。じつに寒い。

そういえば、小牧の新図書館には、武雄市図書館と同様、スターバックスが入るといううわさがあります。

なるほど、スタバか。CCCが携わる新図書館の基本設計や方針も、全国のどこへ行っても金太郎飴のスタバなんでしょうね。もちろん、「ジモト」ならではの独自性を打ち出すかと思いますが、それもハローキティーのご当地限定みやげレヴェルにとどまることでしょう。

私が理想とする図書館は、たとえていえば、豆にこだわる店主が運営する自家焙煎のコーヒー店です。でも、実際問題、この小牧で、そんなコーヒーをわざわざ飲みに来る人たちがどれだけいるのか? いないでしょう。

では、現在の図書館はどうかというと、酸味の強いブレンド・コーヒーにおつまみが付いてくる、常連さんしか来ない昔ながらの喫茶店です。小牧市立図書館へはこれまでにも何度も足を運びましたが、自分が探している本が置いてあった試しがありません。地元である小牧・長久手の戦い関連の本を探しに来たときも、思っていたほど揃ってなくて愕然としました。本棚のレイアウトも公立の小中学校に毛が生えた程度のレヴェルでダサダサ。とても「おとな」の行くところには思えません。ただ、建物はすばらしいので、なんらかのかたちで残してもらいたいものです。

現在の小牧市立図書館外観(建築PICNICより)

現在の小牧市立図書館外観(「建築PICNIC」HPより)

そんなわけで、私は「TSUTAYA方式」を採ろうが、採るまいが、はなから新図書館の「中味」には期待できないと思っています。だって、どっちに傾こうがポピュリズムを貫くのに変わりはないのですから。

そもそも、「TSUTAYA方式」推進派にとっては、新図書館の蔵書内容なんかどうだっていいことです。大切なのは、新図書館に多くの人が集まって小牧駅前が活性化することなのですから。いってみれば、図書館の名を借りたアミューズメント・パーク。この場合、本は手段であって目的ではないのです。悲しい話ですが。

といって、今回の住民投票で新図書館建設計画が見直しになったとしても、「良識派」と目される「市民たち」がイニシアティブをとるのであれば、図書館は愛書家としての私の意に沿うものにならないでしょう。

だから、判断に迷いました。そして、悩んだあげく、こう結論しました。

中心市街地を活性化するのに、行政機関としての小牧市にやれる最善の策は、新図書館の建設ぐらいしかないかもしれない! 成功するか失敗するかは別として。

民間活力導入の是非については、昔ながらの喫茶店の延長線上にある「コメダ」が来るぐらいなら、「スタバ」の方がまだマシ、といったところでしょうか。

願わくば、本と小牧をこよなく愛し、こだわりと情熱を持ったバイタリティあふれる司書が現れんことを。

(2015/09/30)

 

この記事についてツイートしたところ、いろいろとご意見をいただきました。

それで思ったのは、一過的な地域活性化とポピュリズムのために、図書館という文化の 〈聖域〉 を、ツタヤごときに明け渡すのは小牧市民として恥である、ということです。

文化は、未来を見据えた持続可能性 sustainability がないとダメだと思います。

私は「Tカード」なんていらない!

(2015/10/2)

2015.09.30 | カルチャー

NHK取材記〜「ビートルズ世代」は誰?

テレビ取材の合い間、おちゃめにポーズしてみせる榎本加代子先生

テレビ取材の合い間、おちゃめにポーズしてみせる榎本加代子先生

『ほっとイブニング』は、NHK名古屋放送局制作で、毎週月〜金曜の午後6時10分〜7時00分、地元のニュースや話題を中心に伝える報道情報番組。

その週はシリーズで「介護」を特集していました。
深刻な介護人材不足に頭を悩ます施設の取り組みや、介護する側の心の負担など、夕方のローカル情報番組らしからぬ問題意識と掘り下げの深さに、つい画面を見入ってしまいました。それは、介護労働を「低賃金」「重労働」「将来性なし」の手垢にまみれたパブリック・イメージをくり返すにとどまる、次元の低い、高みに立った紋切り型の論調とはひと味もふた味もちがっていました。

NHKが取り上げたこうした問題は、重たい「現実」です。だから、少しでも多くの人びとに知ってもらう必要があります。といって、これらに対して絶望的な気持ちでいたところで何にもなりません。そんな中でも前を向いて、喜びや楽しみを見つけようという態度で臨むことが大切なのではないか。私が『ダンスフェス2013』を通じて訴えたかったのはそのことです。そんなわけで、番組のHPあてに『ダンスフェス2013』開催の告知させてもらったのでした。

ご案内したのは『ダンスフェス』がおこなわれる土曜日の週でしたので、ほんの3、4日前。時間的にみて、番組で取り上げてもらえるとは当初から考えていませんでした。「いま、なぜ、ダンス・リハビリなのか?」についてHPに書いた文章が、シリーズ「介護」の担当者の目にとまってくれたらいい。そんな程度でした。

それから2日ほどして、記事を読んで興味を持ってもらえたNHKの松岡さんという記者の方から電話があり、イベント当日、プライベートで見に来てもらえることになりました。

松岡さんは、電話口から想像していたとおり、気さくでさっぱりしていてウィットに富んだ笑顔が印象的な女性でした。イベント終了後に話し合って、2日後の月曜日、榎本先生のいつものレッスンに撮影クルーを連れて取材に来てもらえることに決まりました。

平成25年11月18日、取材班は記者の松岡さんを含む3人で現れました。驚いたのは、松岡さんはじめ、カメラ担当の方も、音声担当の方も全員が女性だったことです。松岡さんは「たまたま」といってましたが、ソフトで友好的なムードを作りながら、取材対象である榎本先生、私、お年寄りのみなさんの緊張感や警戒心をたくみに緩めて、すんなり中に入り込んでいくやり方は、女性ならではかもしれないと感心しました。2日前のイベントで取材してもらった中日新聞記者の方の、観察者的で、記者然とした一問一答的な取材態度とは好対照でした。

いつものレッスンを終えてインタビューを受けている榎本先生

いつものレッスンを終えてインタビューを受けている榎本先生

レッスン中のお年寄りに、にこやかにさりげなく近づいてインタビュー

参加したお年寄りににこやかに近づいてインタビュー

その様子は、その週の21日、木曜日の『ほっとイブニング』で放映されました。放送時間は思っていたより長く、3分はあったと思います。

放送では、介護サービスを受ける高齢者の中心が戦中・戦後世代になって、価値観が多様化し、介護施設でのレクリエーションが従来の〈高齢者=演歌・民謡〉の紋切り型だけでは通用しにくくなっていること。そこで、スポーツ・クラブに通う高齢者が増えていることに着眼して、リハビリの一つとしてダンス・エクササイズを取り入れた、という私の考えが紹介され、当施設でのレッスン風景が映し出されました。

画面からは、お年寄り、榎本先生、スタッフたちの表情や仕草に、よそ行きではない、きれいごとではない、いつもどおりの和気あいあいとしたムードがにじみ出ていて、とてもよかったと思います。私も彼ら、彼女らの、ああした笑顔を見るのがうれしくて、ブログで紹介し『ダンスフェス』をする気になったんだなあと、そのとき思いました。

ただひとつ、問題があったとすれば、裏方のつもりでいた私がクローズアップされていた点です。放送終了後、お礼かたがた、メールで松岡さんにそのわけをたずねてみると「塚原さんがおもしろかったから」だそうです。喜んでいいのか、反省すべきなのか、微妙なところです。

NHK記者の取材を受ける筆者

松岡記者の取材を受ける筆者。左手にはさりげなくICレコーダーが。

反省といえば、放送で「ビートルズ世代に向けた取り組み」とありましたが、あれは私の失言です。
ビートルズが日本公演をおこなった66年前後に青年期を迎えていた世代を「ビートルズ世代」と呼ぶことがあります。その世代の人たちもいまや70歳前後になり、今後、介護のリスクが高くなるのはまちがいありません。ですが、現時点では大多数はまだ元気です。
ダンス・エクササイズの中心世代は、彼らより10歳近く年長の、ちょうど55年頃に青年期を迎えた人たちです。だから「マンボ世代」と紹介されるべきだったと思います。

なぜ、私がこんな初歩的な失言をしてしまったかというと、取材の翌日、元ビートルズのポール・マッカートニーの東京ドーム公演に行く予定だったからです。そのため、頭の中がビートルズのことでいっぱいになっていて、ついつい口がすべってしまいました。この場所を借りてお詫びします。

そんなわけで、ここですこし話題を変えて、翌19日のポールの東京ドーム公演の話をしたいと思います。

ポール・マッカートニーは今年、71歳を迎えました。彼の年齢から考えて、最後の日本公演になるだろうと思った私は青春時代のメモリアル体験ぐらいの気持ちで、中味にはあまり期待せずコンサートに足を運びました。 だが、それはとんでもない誤解でした。

‘Yesterday’‘Day Tripper’‘Lady Madonna’‘Obla Di Obla Da’‘Hey Jude’‘The Long And Winding Road’‘Let It Be’ といったビートルズ時代のポールの代表曲から、最新ソロ・アルバム“NEW” 収録曲まで、全37曲を、ポールは、ベース、生ギター、エレキ・ギター、ピアノと次々と楽器を乗り替えながら、キーを下げることなく、アレンジも当時のままほとんど変えずに、約2時間45分を、ほぼ休憩なしにエネルギッシュに歌いこなしました。

ポールのニュー・アルバム"NEW"

ポールのニュー・アルバム"NEW"

ビートルズのナンバーでもっともワイルドでヘヴィな‘Helter Skelter’ をアンコールで見事にシャウトして歌ったり、名作『アビーロード』B面、怒濤のメドレーのラスト、その名も‘The End’ で、ジョン、ポール、ジョージで演じた三つどもえの激しいギター・バトルを再現してみたりと、とても71歳とは思えない現役感バリバリの姿に、最後は感動を通り越して放心状態になってしまいました。

ポール以外にビートルズのメンバーで存命中はリンゴ・スターで73歳。生きていれば、ジョン・レノンは73歳、ジョージ・ハリスンは70歳です。本人たちの年齢を基準にすれば「ビートルズ世代」は、あながちまちがっていないかも。

ところで、66年のビートルズ来日公演をきっかけに日本の若者文化は大きく変わったといわれています。ところが、全共闘運動を扱った大著『1968』(新曜社)で歴史社会学の小熊英二は、当時の青少年がこぞってビートルズ熱に犯されたというのは、後年に創られた「神話」であるといっています。
じつはビートルズのレコードが本格的に日本で売れるようになったのは、解散後の73年に発売された通称「赤盤」「青盤」と呼ばれている二組の2枚組ベスト盤以降なのだそうです。

筆者の書棚から、小熊英二『1968』背表紙

筆者の書棚から、小熊英二『1968』背表紙

私は13歳の時にポール・マッカートニーとウイングスが歌った映画『007死ぬのは奴らだ』の主題歌をきっかけにビートルズを知るようになりました。ビートルズにもっともはまっていたのは、ポール絶頂期の『バンド・オン・ザ・ラン』と、続く『ヴィーナス・アンド・マース』のあいだですから74、75年です。だとすると、61年生まれの私こそ、正真正銘の「ビートルズ世代」ということになります。

ということは、「ビートルズ世代」の洋楽マニアだった私が、同世代だが異次元にいた「ディスコ世代」の榎本先生と30数年後に高齢者介護というフィールドで出会い、ダンス・リハビリが実現したということなかもしれません。
3月にはローリング・ストーンズの東京ドーム公演へ行ってきます。

2013.12.25 | カルチャー音楽とアート

ダンス・エクササイズは Feel so Good! ③ 〜「ダンスフェス2013」開催!

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インドのボリウッド系ダンス音楽に合わせて「エイッ!」とばかりに空を切り裂く

デイケア対象のエクササイズが好評だったことを受けて、この5月から入所者を対象にしたエクササイズ教室も始めました。要支援の方も混じっているデイケアとちがって、入所の方の平均的な要介護度は3.5〜4のあいだ。デイケアとはまったく別のプログラムが必要です。
あいにく榎本先生はスケジュールの都合が付かなかったため、こちらはお弟子さんの石橋貴子先生にお願いすることになりました。
入所はほとんどが車イス以上か、認知症の重い方々です。そんな事情から、先生自身がご利用者のおられる階に出向くという出張スタイルをとりました。「デリバリー」と「リハビリ」をくっつけ、名づけて「デリバリリハビリダンス」。
こうして毎週水曜の午前10時30分から、3階と4階で隔週ごとに指導してもらうことになりました。
頭を使いながら身体を動かすスタンスは榎本先生と同じですが、腕の上げ下げや指の曲げ伸ばしなど、上半身の可動域中心のエクササイズになります。大きな声で発語しながらストレッチをしたり、誰もが知っている童謡や唱歌を歌ってもらいながら身体を動かしたりするトレーニングもおこないます。
最後のダンスは、インドのボリウッド歌謡やラテンをよく使われる榎本先生とはちがって、BGMには嵐などの日本の歌謡曲が使われたりします。
いつもにこやかでやさしい笑顔を絶やすことなく、柔らかい身体の動きでお年寄りの心を和ませてくれる石橋先生のイメージをひとことでいうなら、
「ニッコリぷるるんドラミちゃん」
というところでしょうか (^_^;
今回、豊寿苑文化祭では「ダンスフェス2013」と題し、榎本・石橋両先生の指導によるダンス・エクササイズのレッスンの模様をワークショップとして公開します。併せて、榎本スクールの生徒のみなさん、ならびに子どもたちのダンスを披露します。日時と場所は次のとおり。
【名称】
豊寿苑文化祭「ダンスフェス2013」
【日時】
平成25年11月16日(土)午後2時開演
【会場】
老人保健施設豊寿苑1階ホール
レッスンにはどなたもご参加いただけます。
この機会にみなさんも是非ご覧いただき体験してみてください。

デイケア対象のエクササイズが好評だったことを受けて、この5月から入所者を対象にしたエクササイズ教室も始めました。要支援の方も混じっているデイケアとちがって、入所の方の平均的な要介護度は3.5〜4のあいだ。デイケアとはまったく別のプログラムが必要です。

あいにく榎本先生はスケジュールの都合が付かなかったため、こちらはお弟子さんの石橋貴子先生にお願いすることになりました。

入所はほとんどが車イス以上か、認知症の重い方々です。そんな事情から、先生自身がご利用者のおられる階に出向くという出張スタイルをとりました。「デリバリー」と「リハビリ」をくっつけ、名づけて「デリバリリハビリダンス」

こうして毎週水曜の午前10時30分から、3階と4階で隔週ごとに指導してもらうことになりました。

腕を大きく広げてニッコリ

腕をおおーきく広げてニッコリ

頭を使いながら身体を動かすスタンスは榎本先生と同じですが、腕の上げ下げや指の曲げ伸ばしなど、上半身の可動域中心のエクササイズになります。大きな声で発語しながらストレッチをしたり、誰もが知っている童謡や唱歌を歌ってもらいながら身体を動かしたりするトレーニングもおこないます。

最後のダンスは、インドのボリウッド歌謡やラテンをよく使われる榎本先生とはちがって、BGMには嵐などの日本の歌謡曲が使われたりします。

いつもにこやかでやさしい笑顔を絶やすことなく、柔らかい身体の動きでお年寄りの心を和ませてくれる石橋先生のイメージをひとことでいうなら、
「ニッコリぷるるんドラミちゃん」
というところでしょうか (^_^;

こんな仕草にもやさしさがしみ出ています

こんな仕草にもやさしさがにじみ出ています

今回、豊寿苑文化祭では「ダンスフェス2013」と題し、榎本・石橋両先生の指導によるダンス・エクササイズのレッスンの模様をワークショップとして公開します。併せて、榎本スクールの生徒のみなさん、ならびに子どもたちのダンスを披露します。日時と場所は次のとおり。

【名称】豊寿苑文化祭「ダンスフェス2013」
【日時】平成25年11月16日(土)午後2時開演
【会場】老人保健施設豊寿苑1階ホール

レッスンにはどなたもご参加いただけます。
この機会にみなさんも是非ご覧いただき体験してみてください。

2013.11.11 | カルチャー

ダンス・エクササイズは Feel so Good! ② 〜リハビリは楽しくなくっちゃ

75歳というと、昭和13年(1938)の生まれ(平成25年現在)。美空ひばりやジョン・レノンと同世代。戦中派というより戦後派。経済白書が「もはや戦後ではない」と宣言した昭和31年(1956)、マンボ・ブームの最中に多感なハイティーンを迎えた世代です。
前述のスポーツクラブの元気なお年寄りたちの姿から想像がつくように、たとえ介護が必要になっても、その世代の人たちがこれまでのようにラジオ体操や、民謡、演歌、童謡などを元にしたシンプルで型にはまったお遊戯みたいなことをやらされて、いつまでも満足しているようには思えません。
それで思い立ったのが、リハビリのツラい療法的なイメージとはちがう、スポーツクラブのスタジオ・レッスンのような楽しいノリのダンス・エクササイズの実践です。
インストラクターは、長年、スポーツクラブなどでフィットネス・エクササイズや、子どもたちにダンス教室を教えておられる榎本加代子先生にお願いしました。
今年2月から毎週月曜の午後、まずはデイケア(通所と予防通所)のご利用の希望者を対象に始めてみました。
榎本先生は、ジャズダンス、エアロビ、ズンバといったダンスの指導はもちろん、パーソナルトレーナーの資格を持ち、最近では介護予防運動や脳の活性化を目的とするシナプソロジーというプログラムの指導士の資格も取得しております。
エクササイズは、おおざっぱに体幹トレーニング(ストレッチ系)、脳トレ、ダンスからなっています。といっても、中味がかっちり定まっているわけではありません。先生はそのときどきのお年寄りの反応を見ては内容を見直していきます。したがって、それがツボにはまれば次回も続けられ、難しいとみればその時かぎりという場合もあるのです。
また、その日の参加者の顔ぶれとノリで予定が変わることもしばしば。そんな臨機応変な進行こそ、当エクササイズの最大の特徴といえるでしょう。
高齢者むけの健康体操というとパターン化されたものがほとんどです。新しく学習することが不得手な高齢者にはその方が安心できるかもしれません。だからこそ、先生は、お年寄りが慣れてきたところであえてパターンを変え、脳の働きを活性化させるよう働きかけます。ただ漫然と身体を動かすのではなく、頭を使いながら身体を動かすことの大切さを教えてくれています。
お年寄りに身体のことを楽しくわかりやすく解説しながら、ちっちゃな身体を大きく使って、ときに軽妙なツッコミをしたり、一人一人とスキンシップをとったりして、お年寄りのやる気をうまく引き出してくれる。
そんな榎本先生のイメージをひとことでいうなら、
「陽気でおちゃめなチョロQ娘」
というところでしょうか (^◇^;)
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ダンスの前にはしっかり体幹トレーニング

75歳というと、昭和13年(1938)の生まれ(平成25年現在)。美空ひばりジョン・レノンと同世代。戦中派というより戦後派。経済白書が「もはや戦後ではない」と宣言した昭和31年(1956)、マンボ・ブームの最中に多感なハイティーンを迎えた世代です。

前述のスポーツクラブの元気なお年寄りたちの姿から想像がつくように、たとえ介護が必要になっても、その世代の人たちがこれまでのようにラジオ体操や、民謡、演歌、童謡などを元にしたシンプルで型にはまったお遊戯みたいなことをやらされて、いつまでも満足しているようには思えません。

それで思い立ったのが、リハビリのツラい療法的なイメージとはちがう、スポーツクラブのスタジオ・レッスンのような楽しいノリのダンス・エクササイズの実践です。

インストラクターは、長年、スポーツクラブなどでフィットネス・エクササイズや、子どもたちにダンス教室を教えておられる榎本加代子先生にお願いしました。

今年2月から毎週月曜の午後、まずはデイケア(通所と予防通所)のご利用の希望者を対象に始めてみました。

頭を使いながら身体を動かす、これがシナプソロジー

頭を使いながら身体を動かす、これがシナプソロジー

榎本先生は、ジャズダンス、エアロビ、ズンバといったダンスの指導はもちろん、パーソナルトレーナーの資格を持ち、最近では介護予防運動や脳の活性化を目的と     シナプソロジーというプログラムの指導士の資格も取得しております。

エクササイズは、おおざっぱに体幹トレーニング(ストレッチ系)脳トレダンスからなっています。といっても、中味がかっちり定まっているわけではありません。先生はそのときどきのお年寄りの反応を見ては内容を見直していきます。したがって、それがツボにはまれば次回も続けられ、難しいとみればその時かぎりという場合もあるのです。 また、その日の参加者の顔ぶれとノリで予定が変わることもしばしば。

そんな臨機応変な進行こそ、当エクササイズの最大の特徴といえるでしょう。

高齢者むけの健康体操というとパターン化されたものがほとんどです。新しく学習することが不得手な高齢者にはその方が安心できるかもしれません。だからこそ、先生は、お年寄りが慣れてきたところであえてパターンを変え、脳の働きを活性化させるよう働きかけます。ただ漫然と身体を動かすのではなく、頭を使いながら身体を動かすことの大切さを教えてくれています。

お年寄りに身体のことを楽しくわかりやすく解説しながら、ちっちゃな身体を大きく使って、ときに軽妙なツッコミをしたり、一人一人とスキンシップをとったりして、お年寄りのやる気をうまく引き出してくれる。

そんな榎本先生のイメージをひとことでいうなら、 「陽気でおちゃめなチョロQ娘」 というところでしょうか (^◇^;)

ダンスに合わせてタァーッチ!

ダンスに合わせてタァーッチ!

2013.11.11 | カルチャー

ダンス・エクササイズは Feel so Good! ① 〜75歳は介護の曲がり角

先日、文部科学省が発表した「体力・運動能力調査」によると、70代の体力は、ここ12年で5歳も若返ったそうです。
当施設の目と鼻の先にスポーツクラブがあります。私は、仕事の合間を縫って日中、そこのジムに通っています。その場所でいつも目にするのは、60代半ば以上の、なかには80代と思われる大勢の男女の方々が元気いっぱいにジャズダンスやエアロビクス、ジムなどに励んでおられる姿です。
鏡張りのスタジオで、インストラクター顔負けの、ピンクやイエローなどのあでやかなスポーツ・ファッションに身を包み、ハウス系のアップテンポなビートに合わせて、跳んだり跳ねたり、激しく身体を動かしておられる姿から、むかしながらの「お年寄り」のイメージを重ねるのがむずかしいと感じました。
このスポーツクラブは、駅前のホテルのビル内にあって、ジム、スタジオ、プール、それに大浴場を備えています。聞いた話によると、平日、その方々はクラブが始まる午前9時にはやって来て、仲間たちとスタジオ・レッスンやら、プールやら、エアロバイクやら、卓球やらを楽しんで、最後はお風呂に入って午後4時頃に帰るのが日課だとか。
「健康」と「社交」。現代の高齢者にとっての最大の関心事を一挙に2つもかなえてくれているのだから、デイタイム月会費6千円前後なんて安いものなのかもしれません。
いっぽう、当施設のご利用者は脳血管性疾患の後遺症などで介護が必要な方々です。平均年齢は入所83.5歳、通所82.6歳、予防通所75.4歳(平成25年10月1日現在)。「入所」と「通所」は要介護認定で介護度1〜5と判定された方々、「予防通所」はそれより軽度の要支援1または2の方々が対象になります。「通所」と「予防通所」ご利用者の実人数比率は5:3です。
前述のスポーツクラブのみなさんの平均年齢はおそらく70歳前後。当施設の入所者/通所者とはひとまわり近い開きがあり、両者の中間に予防通所の方々がおられる図になります。
偶然にも予防通所ご利用者の平均年齢75.4歳は「後期高齢者」の開始年齢と重なります。75歳を過ぎると、介護が必要になるリスクが高くなることから、近年、この名称が使われるようになりましたが、データはこの見方を証明しているかのようです。
むかし「25歳はお肌の曲がり角」という化粧品のCMになぞらえるなら、「75歳は介護の曲がり角」
というところでしょうか。

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先日、文部科学省が発表した「体力・運動能力調査」によると、70代の体力は、ここ12年で5歳も若返ったそうです。

当施設の目と鼻の先にスポーツクラブがあります。私は、仕事の合間を縫って日中、そこのジムに通っています。その場所でいつも目にするのは、60代半ば以上の、なかには80代と思われる大勢の男女の方々が元気いっぱいにジャズダンスやエアロビクス、ジムなどに励んでおられる姿です。

鏡張りのスタジオで、インストラクター顔負けの、ピンクやイエローなどのあでやかなスポーツ・ファッションに身を包み、ハウス系のアップテンポなビートに合わせて、跳んだり跳ねたり、激しく身体を動かしておられる姿から、むかしながらの「お年寄り」のイメージを重ねるのがむずかしいと感じました。

このスポーツクラブは、駅前のホテルのビル内にあって、ジム、スタジオ、プール、それに大浴場を備えています。聞いた話によると、平日、その方々はクラブが始まる午前9時にはやって来て、仲間たちとスタジオ・レッスンやら、プールやら、エアロバイクやら、卓球やらを楽しんで、最後はお風呂に入って午後4時頃に帰るのが日課だとか。

「健康」「社交」


現代の高齢者にとっての最大の関心事を一挙に2つもかなえてくれているのだから、デイタイム月会費6千円前後なんて安いものなのかもしれません。 いっぽう、当施設のご利用者は脳血管性疾患の後遺症などで介護が必要な方々です。平均年齢は入所83.5歳、通所82.6歳、予防通所75.4歳(平成25年10月1日現在)。「入所」と「通所」は要介護認定で介護度1〜5と判定された方々、「予防通所」はそれより軽度の要支援1または2の方々が対象になります。「通所」と「予防通所」ご利用者の実人数比率は5:3です。

前述のスポーツクラブのみなさんの平均年齢はおそらく70歳前後。当施設の入所者/通所者とはひとまわり近い開きがあり、両者の中間に予防通所の方々がおられる図になります。

偶然にも予防通所ご利用者の平均年齢75.4歳は「後期高齢者」の開始年齢と重なります。75歳を過ぎると、介護が必要になるリスクが高くなることから、近年、この名称が使われるようになりましたが、データはこの見方を証明しているかのようです。

むかし「25歳はお肌の曲がり角」という化粧品のCMになぞらえるなら、「75歳は介護の曲がり角」というところでしょうか。

2013.11.11 | カルチャー

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