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Poison & Medicine ブログ 毒と薬

2025.7.18

豊寿苑

エッセイ

参議院不在者投票実施 自由と平等はタテマエなのか?

7月15日、当施設において、20日に投開票がおこなわれる参議院議員選挙の不在者投票をおこないました。

今回は、豊寿苑30年の歴史で、最多の22人が不在者投票に参加されました。

「準備も、手続きも、当日の受付も、何もかも、オレが引き受けるから」と言ったところ、スタッフが張り切って声かけしてくれて、こうなったわけです。


不在者投票は手続きが面倒くさくて、時間と労力をとられます。
しかし、選挙は国民の権利です。

情報が不足しがちなご利用者に対し、しっかりと、わかりやすく情報提供したうえで、当人の意志を確認するのは介護施設の責務だと思います。


不在者投票の意志表明をされた入所者の方々については、住民票のある自治体の選挙管理委員会から不在者投票用紙を取り寄せました。

今回の参議院議員選挙では、一人につき愛知県選挙区と比例代表の2通が送られてきました。


それらといっしょに、選挙区と比例代表の候補者名と所属政党・団体が記載された用紙が同封されていました。

14人が立候補した愛知県選挙区は A4用紙1枚、172人の立候補者名と政党名を記載した比例代表に至っては A3用紙1枚というありさま。

小さな文字でびっしり書かれたこれらの紙切れと「選挙公報」を参考に不在者投票をおこなえというのは、白内障・緑内障、認知症などがある要介護の方々の権利をタテマエでは尊重しつつも、実質は排除しているあらわれと感じました。


そこで、わたしは施設内の投票場所を、選挙区用ブースと比例区用ブースとに分け、目隠しに用いる前後左右の透明のパーティション(コロナ時に使ったアクリル・パネルを流用)一杯に、それぞれの候補者と政党名を、ひらがな表記と併せて、できるだけ大きな文字で印刷した用紙を貼り付けました。


ところが、投票日の前日になって、不在者投票の場所ではいっさいの掲示は認められていないことが判明。

愛知県の選挙管理委員会に問い合わせたところ、一般の投票会場の入口に掲示されている候補者名などを記した巨大な掲示も、不在者投票においては認められないとのことでした。

その理由というのが、施設では立候補者の氏名を掲示できる法律上の規定がないからだそうです。

「記載や掲示の仕方によって自由公正を欠くおそれがあるから」というのはわかりますが、一般の投票会場で普通におこなわれていることが、ハンディキャップのある人たちの不在者投票所では認められない!というのは、それこそ自由公正を欠くと思いました。


「それはあまりに現実的ではない」と、選管に食いついたところ、一人一人にメモを渡すぶんには問題ないとの言質(げんち)がとれました。

ならばと、当日、受付でそれぞれの投票用紙が入った封筒をお渡しするさいに、選管のウェブページに記載された名簿順に候補者名等をできるだけ大きな文字で表記したA3用紙の「巨大なメモ」をお渡しすることにしました。


こうして、受付のわたしと、自治体選管に要請した外部立会人(りっかいにん)二人の計3人で本番を迎えました。

受付で投票用紙が入った封筒をお渡しするさい、一人一人に投票手順を説明しましたが、介護スタッフの付き添いがないと先に進めないご利用者も少なからずいらっしゃいました。

なかには、文字が書けず、代理投票になったケースもありました。


22人の不在者投票を無事終えての感想はというと…

主体性をもって客観的に判断し投票したように思えた人たちはひと握り。
多くは手渡された「メモ」を見て、たまたま目に入った候補者や政党名を、なんとなく選んで記載したようにしか見えませんでした。

この現実を突きつけられて、自由と平等という理念、いいかえれば「タテマエ」にこだわる自分が道化に思えてきました。


20日の参議院選では「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」を主張するポピュリズム政党が躍進するとのこと。

いまこそ、スペインの思想家、オルテガ・イ・ガセットが1930年に刊行した『大衆の反逆』を読み返すべき時なのかも知れません。

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